「宿題が嫌すぎて家出した」——うちの子が教えてくれたこと
宿題バトルの末、子どもが家出を選んだあの日。デューク大学のクーパー教授の研究は「小学生の宿題と学力に相関はない」と示します。「意味ない」という子どもの問いに向き合った親の実体験から、宿題への向き合い方を考えます(宿題 やらない 小学生)。
「宿題が嫌すぎて家出した」——うちの子が教えてくれたこと
勉強はできる。でも、宿題には断固として向かわない。そしてある日、子どもは「友達の家に行く」と言って帰ってこなかった。あのとき私が学んだことを、正直に書きます。

あの日のこと
小学校の中学年のころ、うちの子は宿題が大嫌いでした。算数のテストでは満点近くとる。授業中も手を挙げる。でも、家に帰るとランドセルを放り投げたまま、宿題のドリルには一切触れようとしない。
「なんでやらないの?」と聞くと、「意味ないから」とひとこと。私は「意味ないってどういうこと、みんなやってるんだから」と言い返して、毎日同じバトルが繰り返されていました。
そしてある夕方、子どもが「○○ちゃんの家に行く」と言って出ていきました。夜になっても帰らない。連絡を取ると、「宿題やれって言われたくないから、ここにいる」と言うのです。
子どもが「家出」を選んだとき、私は最初、すごく腹が立ちました。でも少し冷静になって考えてみると、あの子なりに「もうここには居られない」と感じるほど追い詰められていたのだということに、ようやく気がつきました。
「意味ないから」は、本当のことだったかもしれない
子どもの「意味ない」は反抗だと思っていました。でも、研究者たちはとっくの昔にその問いに向き合っていました。
研究知見
デューク大学のハリス・クーパー教授は、1987年から2003年の宿題に関する研究を網羅的に分析し、こう結論づけています。「小学生においては、宿題の量と学力の間にほぼ相関関係は見られなかった」——つまり、小学生が宿題をやってもやらなくても、学力への影響はほぼないということです。※1 勉強ができる子が「意味ない」と感じるのは、あながち間違いではなかったのかもしれません。
もちろんこれは「宿題をしなくていい」という話ではありません。ただ、「みんなやってるんだから意味はある」という大人側の思い込みを、一度脇に置いてみる必要があると気づかされました。
「なぜやるの?」という子どもの問いに、私はちゃんと答えられていなかった。
「できる子」ほど、宿題に反発しやすい理由
授業で理解できてしまう子にとって、同じ内容の宿題は「繰り返しの作業」に過ぎません。
研究知見
自己決定理論(Deci & Ryan)によると、人は「自律性(自分で決めたい)」「有能感(できると感じたい)」「つながり(認められたい)」という3つの欲求が満たされるとき、自発的に動きます。すでに内容を理解している子どもにとって、簡単すぎる宿題は「有能感」をまったく刺激しません。それどころか、やらされている感だけが残り、「自律性」も損なわれてしまいます。※2
また、宿題のような「期限と量が決められた課題」は、もともと学習に喜びを感じていた子どもの意欲を下げるリスクがあることも指摘されています。※3
あのとき、私が変えたこと
友達の家から帰ってきた子どもと、久しぶりにゆっくり話しました。「宿題の何が嫌なの?」と聞くと、「同じことを何度も書かされるのが無駄だと思う」「先生がなんで出してるのかわからない」と言いました。
私はそのとき初めて、「そうか、そう思うよね」と言えました。それまではずっと「やらなきゃいけないの!」しか言っていなかったので。
共感が先、説得は後。これが、うちの場合は大きな転換点でした。
それからは、宿題そのものを無理にやらせることをやめて、「どうすれば納得できる形でやれるか」を一緒に考えるようにしました。全部じゃなくていい、漢字は3回じゃなく1回でいい、終わったら好きなことをしていい——子ども自身が「選んだ」と感じられる余地を少し作るだけで、バトルはほぼなくなりました。
家出した子どもが教えてくれたこと
子どもは「逃げた」わけじゃなかったと、今は思います。「ここでは話を聞いてもらえない」と感じて、安心できる場所を自分で探したのだと思います。
それはある意味、すごく健全な行動だったのかもしれない——というのは少し言いすぎかもしれませんが、少なくとも、私が変わるきっかけになりました。
宿題をやらない子の中には、「やりたくない」のではなく「やる意味が見えない」子がいます。そしてその問いは、案外まっとうなのです。まず「なぜやるの?」に一緒に向き合ってみること——それが、うちでは一番効いた方法でした。
宿題に取り組みやすくなる入口として、テーマが明確で短時間で終わるプリント教材も活用してみてください。BrainySprouts Printsでは、小学生向けのワークシートを無料配布しています。
シリーズ:宿題と子どもの本音
- 第1回:「宿題やりなさい!」が逆効果になる理由と、わが子に合ったアプローチの見つけ方
- 第2回:「宿題が嫌すぎて家出した」——うちの子が教えてくれたこと ← 今読んでいる記事
参考文献
- ※1 Cooper, H., Robinson, J.C., & Patall, E.A. (2006). Does homework improve academic achievement? A synthesis of research, 1987–2003. Review of Educational Research, 76(1), 1–62. https://journals.sagepub.com/doi/10.3102/00346543076001001
- ※2 Ryan, R.M., & Deci, E.L. (2000). Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being. American Psychologist, 55(1), 68–78.
- ※3 千葉工業大学デザイン科学科「宿題について考える」https://tcid.jp/debate/debate0027/




