「宿題やりなさい!」が逆効果になる理由と、わが子に合ったアプローチの見つけ方
この記事の要点
「やりなさい!」が宿題嫌いを育てる理由とは。自己決定理論とグロースマインドセット研究をもとに、宿題をやらない子のタイプ別背景と、親ができる声かけのアプローチを整理します(宿題 やらない 対処法)。
「宿題やりなさい!」が逆効果になる理由と、わが子に合ったアプローチの見つけ方
毎日繰り返す宿題バトル。怒鳴っても無視されるし、ほうっておくと全然やらない……。そんな悩みを持つ親御さんへ、心理学の研究から見えてきたことをお伝えします。

「やらない」の裏にあるもの
宿題をやらない子を見ると、つい「やる気がない」「怠けている」と感じてしまいますよね。でも実は、「やらない」にはいくつかの背景があります。疲れてエネルギーが残っていない、内容が難しすぎてどこから手をつければいいかわからない、ゲームやYouTubeが目の前にあって集中できない環境の問題……。「やりたくない」と「できない」は、まったく別の話なのです。
ベネッセ教育総合研究所の木村治生主席研究員によると、宿題に取りかかれない理由は子どもによってさまざまで、「宿題をする意味を理解していない」「やりたいけれどわからない」「宿題の存在を忘れている」ケースも少なくないといいます。※1
まず「なぜやらないのか」を知ることが、解決の第一歩。叱る前に、少し立ち止まって観察してみましょう。
「命令」が逆効果になる理由——自己決定理論から
「早くやりなさい!」と強く言えば言うほど、子どもがやらなくなる——そんな経験はありませんか?これは、心理学の「自己決定理論(SDT)」も考える手がかりになります。
研究知見リチャード・ライアン博士とエドワード・デシ博士(ロチェスター大学)が提唱した自己決定理論によると、人間には「自律性(自分で決めたい)」「有能感(できると感じたい)」「つながり(認められたい)」という3つの根本的な心理的欲求があります。強い統制が自律性を損なう場合があります。一方、課題の意味を本人が理解するなど、外から始まった動機が自分の目標になる場合もあります。
RyanとDeci(2020)のレビューでは、本人が学ぶ意味を理解できることや、必要な支援を受けられることなどに注目しています。家庭での声かけだけで意欲や成績が決まるわけではありません。※2
つまり、「やらなかったら怒る」というアプローチは、短期的には動かせても、長期的には「宿題=嫌なもの」という印象を強化するだけになりやすいのです。
「やらなさ」のタイプ別・対処のヒント
原因によってアプローチは変わります。お子さんはどのタイプに近いでしょうか?
タイプ① 疲れ・モチベーション切れ系- 帰宅直後ではなく、おやつ+休憩のあとに宿題タイムを設ける
- 「15分だけやろう」と短いゴールを先に伝える
- 終わったら好きなことをしていい、というルールを一緒に決める(本人が決めることが大切)
- 「全部やる」ではなく「1問だけ一緒にやってみよう」と寄り添う
- わからないところはそのままにせず、先生に質問するよう促す
- プリント教材など、紙で繰り返し練習できる素材を使って定着を図る
- 宿題の時間はテレビ・スマホをリビングから見えない場所へ
- きょうだいも一緒に「勉強タイム」にしてしまう
- ダイニングテーブルなど、親の目が届く場所でやると取り組みやすいこともあります
「できた!」の積み重ねが、自分から動く力を育てる
心理学者のキャロル・ドゥエック博士(スタンフォード大学)は、能力は学習や工夫によって伸ばせると捉える「成長マインドセット」を説明しています。※4
大切なのは結果ではなく、取り組みを認めること。「今日は15分集中できたね」「昨日より早く始められたね」という小さな承認の声かけが、子ども自身の「やる気の種」になります。怒って無理にやらせるより、できたことを見つけてほめる習慣のほうが、長い目で見ると効果的です。
それでもうまくいかないときは
「わかってはいるけど、毎日のことだし……」という気持ち、よくわかります。完璧にできなくていいんです。宿題をやらない日があっても、それで子どもの将来が決まるわけではありません。
なかなか改善しない場合、集中を保つことや見通しを立てることが苦手な特性(ADHDや学習障害など)が背景にあるケースもあります。そのような場合は担任の先生やスクールカウンセラーに相談することも一つの選択肢です。※5
何より大切なのは、子どもが「親は自分の味方だ」と感じられること。「どうしたら一緒にうまくいくか」を子どもと話し合う姿勢が、長い学びの道の土台になります。
宿題の習慣づけに、無料のプリント教材も役立ててみてください。BrainySprouts Printsでは、国語・算数・英語など小学生向けのワークシートを無料で配布しています。「まず1枚だけ」から始めるのにぴったりです。
参考文献
- ※1 ベネッセ教育情報「宿題をやらないのはどうして?子どもの心理を理解して上手に対応する方法」(2024年3月)https://benesse.jp/kyouiku/202403/20240318-1.html
- ※2 Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2020). Intrinsic and extrinsic motivation from a self-determination theory perspective. Contemporary Educational Psychology, 61, 101860.
- ※4 Carol S. Dweck, Mindset: The New Psychology of Success(2006)。日本語版:今西康子訳『マインドセット——「やればできる!」の研究』草思社(2016)
- ※5 学研「小学生が宿題をやらない時の解決策」https://kosodatemap.gakken.jp/learning/education/102540/
